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講義に関する料金の不返還特約と消費者契約法【弁護士が解説する学校法務】

2020年8月10日

学校法人中央大学の法務全般を担当するインハウスローヤー「法実務カウンセル」の弁護士,櫻井俊宏です。

大学でも,課外のセミナーがいくつか設けられています。このようなセミナーで,開始前にやはり参加を解除しても,費用が全部没収となっている学校は多いと思います。
このような扱いは問題ないのでしょうか。
具体的事例等と共に解説します。

1 不返還特約と消費者契約法

例えば単位と関係ない留学プログラムの際,参加学生が事前に支払った宿泊費等の費用は,参加を解除しても返還請求できない旨の規定が参加募集案内に記載されていることがあります。

このような問題においては,消費者契約法9条,10条が問題となります。

消費者契約法9条は,解除された場合に一般的な「平均的損害」を超える部分の違約金条項に関しては無効となるというものです。

消費者契約法10条は,消費者の権利を一方的に侵害するような内容の契約条項は無効であるという,9条よりも抽象的で広い条文です。


【参照】
消費者契約法

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)

第九条  次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。

一  当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分

二  当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

 

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

第十条  民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。


2 消費者契約法はどのように適用されるのか

9条の「平均的損害」といえるかどうかの判断は,
解除の事由,
時期,
契約の性質,
準備費用等の内容,
契約の代替可能性
その他
の要素によって決まります。

10条で無効になるかどうかの判断要素は,
契約締結過程における情報・交渉力の格差,
金額の高額性等条項の内容自体の客観的妥当性,
実務慣行,標準約款,
等の要素により決まります。

その他留意点として,講義の場合は,準委任契約(民法第656条)が成立しているので,事前の解除はともかく,途中の解除は,履行の割合に応じて報酬を請求できます。(民法第648条第3項)。

留学の場合は,宿泊先を留学前に決めなくてはならない,宿泊先においてもキャンセルが難しい等のことは,違約金の設定が妥当であるとなりやすい要素と言えます。

いずれにしろ,事前に,講義の準備に,これだけの経費負担があるということをなるべく精密に参加学生および父母等へ説明すべきです。
これを行うことが,その後の平均的損害の算定や無効かどうかの判断にも影響することになります。

 

3 具体的裁判例

講義に限らず,消費者契約法9条,10条が問題となった事例として下記のものがあります。

ア 大学受験予備校の講習受講契約等に基づく解除制限特約の事例

東京地裁平成15年11月10日裁判例

・実質的に受講料又は受験料の全額を違約金として没収するに等しいような解除制限約定は,消費者契約法第10条に違反。

・受講契約は準委任契約であるから,民法上,解除をいつでもすることができる(民法第656条,第651条)。

 

イ 学納金返還訴訟の事例

最高裁平成18年11月27日判例

・在学契約は消費者契約法所定の「消費者契約」に含まれる。

・不返還特約が公序良俗(民法第90条)に反するかどうか。

・入学金は返還しなくてもよい。授業料は返還しなくてはならない。

 

ウ 外語幼稚園の事例

東京地裁平成24年7月10日裁判例

・1学期開始(9月1日)前であれば,消費者契約法第9条の平均的損害は生じないものであり,不返還特約は全て無効とした。

 

エ ホテルの宿泊料の事例

東京地裁平成24年9月18日裁判例

・宿泊前7日を過ぎた場合,50%のキャンセル料を徴収することは消費者契約法第9条平均的損害の範囲内である。

 

オ 弁護士の着手金の事例

横浜地裁平成21年7月10日裁判例

・遺産相続の案件において,着手金が500万円であった。弁護士は,約2年間,相続税の申告,他の当事者との協議,遺産分割調停を遂行したが,300万円を超える部分は,消費者契約法9条又は10条により無効となった。

 

カ パーティーの料金の事例

東京地裁平成14年3月25日裁判例

・平成13年4月8日,Xがパーティーのため,人数30~40人,1人当たり4500円で予約した。店側が,翌日の4月9日,他の客の大口の問い合わせがあったので,あらためてXに予約の確認をしたところ,Xは,パーティーを行うことを返答した。しかし,Xは4月10日,解約の意思表示をした。

店の規約では営業保証料が1人当たり5229円となっていて,全額請求できることになっていたので,店側は,40人×5229円=209,160円を請求したが,裁判所は,当初の4500円の30%に35人を乗じた47,250円の範囲で認め,それを超えた部分は平均的損害を超えるとした。

 

キ 美容整形手術の事例

東京地裁平成16年7月21日裁判例

・美容整形手術の当日に,契約取消の意思表示をした場合に,既に支払われていた63万円の手術費全額は,「平均的損害」を超えないものとした。

 

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