TOP >  スタッフブログ >  コロナ問題において大学の学費減額の可能性は?【弁護士が考察】 

コロナ問題において大学の学費減額の可能性は?【弁護士が考察】 

中央大学法実務カウンセル(インハウスロイヤー),新宿・青梅・あきる野の弁護士法人アズバーズ。代表弁護士の櫻井俊宏です。

早稲田大学がコロナ問題下において,今年の学費をどうするかについて意見を表明しました。

これを説明し,何が問題となるかについてお話したいと思います。

 

 

1 大学の現在の状況と問題点

コロナ問題で,今,ほとんどの大学は,公共団体の要請により,「3密」を避けるため,学生が完全に入れないようにしています。
その上で,オンラインの講義や教材等で学生に教育を提供しているようです。
ということは,学生は教育は受けているものの,図書館等の大学の施設を利用できない状況にあります。

これに対して,学生達は,学費を返還するように署名活動を行っているようです。
借金をして大学に来ている学生,アルバイトができず困っている学生も多くおり,無理もない話ではあります。

一部の大学は,5~10万程度のお金を支援金名目で学生に給付しています。

 

2 早稲田大学の意見表明の概要

詳しくは本記事の最後にリンクしている実際の学長の文章を見てもらいたいです。

①早稲田大学としては,学費というものは常に一律のものであるとまず説明しているように読めます。

②その上で,オンラインや電子書籍の仕組み等を充実させており,それによって,多額の費用がかかっているが,学費に上乗せしておらず,やはり一律に取り扱っていることを説明しています。

③そのような状況の中,大学はコロナ情勢に対応して最善を尽くしていることを話し,学生達に理解を求めています。

 

3 コロナ問題の中,学費に関する法的問題

早稲田の意見はともかく,実際,通常はどこの大学でも入学前のパンフレット等で「図書館の利用」や「対面での講義」について説明しているので,今のオンライン講義や図書館が利用できないことが,大学側が在学契約(学生と大学との間の契約のことを言います。)を果たしておらず契約違反であると言えるかが問題となるのでしょう。

これについては,下記の最高裁の「在学契約」というものの説明が参考になります。



これにより,教育という「目的」を果たすような「教育役務」が提供できていれば,在学契約における大学の義務が果たされているというようにも読めるので,教育役務(教育内容)が相当なものであれば,大学の義務は果たされており,契約違反はないと考えることができるように,この判例の趣旨からは考えることができるように思います。

これに対し,在学契約という無名契約が,厳密に事前に予告した内容でなければないというものであれば,契約違反が成立するとなるのでしょう。

 

4 旧民法か新民法か

今の時点で学生の地位を持つ人は,2020年4月より前に在学契約を締結しています。

先程の最高裁判例は,募集に応じて学生が学費を最初に支払った時点(通常は3月)で在学契約が成立しているとも述べているからです。

このことから,今大学生の地位にある者の在学契約は,改正前の旧民法が適用されることになりそうです。

この場合には,債務不履行(旧民法415条)なのか,瑕疵担保責任(旧民法570条)なのか,等,いろいろと更に法的問題が考えられそうです。

いずれにしろ,コロナ感染防止のため公共団体に要請されたことであるから大学がやむを得ずロックアウトとなっていることは不可抗力といえそうであり,そのあたりの事情はかなり重要となりそうです。

 

早稲田の意見

早稲田大学の学費に関する考え方について Waseda University’s Policy on Tuition

参考記事「民法改正により大学入学時の保護者の責任が変わる?」へ

 

 

前の記事「コロナの影響下において家賃を下げるには」へ

次の記事「インハウスロイヤーとは?」へ